マルセル北村です。
ゲーミングPCに限らず、パソコンのストレージのメインストリームはHDDからSSD(ソリッドステートドライブ)に取って代わられて久しいです。
しかし、HDD自体は今も販売されています。そこで、こんな疑問を持つ方もいるのではないでしょうか。
HDDが売られてるってことは、まだ需要があるってことだよね?
ゲーミングPCに搭載する必要があるのかな……?
今回はそんな疑問に回答します。
ちなみに、結論から言うと「ゲーミングPCにHDDは一切いらない」です。
もちろん、私自身もゲーミングPCにHDDは積んでいません。
M.2SSDのみ搭載しています。
しかしHDDにはまだ用途があるため、HDDが必要な方はゲーミングPCに搭載するのではなく「NAS」を購入して使用することを強くおすすめします。
NASは世界が変わるくらい便利でおすすめです。
ゲーミングPCのストレージ事情
各社のBTOゲーミングPCを確認してみるとわかりますが、デフォルトでHDDを積んだゲーミングPCはもはや販売されていません。
それだけSSDが一般化している証左です。
カスタマイズでHDDを追加することは出来ますが、絶対におすすめしません。
ゲーミングPCにHDDは必要ない理由
ゲーミングPCにHDDは必要ない理由は以下の通りです。
- OS、ゲームのインストール先はSSD一択
- HDDはうるさい
- そもそも搭載する場所がない
- 見栄えが悪くなる
OS、ゲームのインストール先はSSD一択
SSDは、HDDと比較にならないほど読み込みが早いです。そのため、読み込み速度が重視されるOSやゲームなどは全てSSDにぶち込む一択です。
冗談抜きで速度が全く違います。
例えばタルコフは、同一マップに参加するメンバーにHDDを使っている人がいるとゲームが始まるまで4、5分かかります(実験済み)。
逆に全員がSSD(だと思われる)の場合、1、2分でゲームが始まります。
HDDはうるさい
HDDは物理的にディスクが回転して書き込みを行っているため、かなりうるさいです。
HDDを使っているパソコンは、パソコンを使用している時に「カリカリカリカリ」と音がします。
SSDは電気自動車のように無音です。
そもそも搭載する場所がない
HDDを搭載するには、PCケースに「3.5インチベイ」が必要なのですが、最近のPCケースだとそもそも3.5インチベイがない場合が多いです。
HDDの需要が減っていることがうかがえます。
見栄えが悪くなる
ゲーミングPCは、PCケース内部の見栄えのもこだわっているものも多いです。
HDDを搭載することで、配線が2本(電源とSATA)増えて見栄えが悪くなります。
現在主流のM.2 SSDの場合、マザーボードに直接接続するのでケース内に余計なケーブルが増えません。
ゲーミングPCにHDDが必要ならNASを使おう
ここまでHDDをボコボコにしてしまった感がありますが、当然HDDにも用途があります。
HDDはSSDに比べ読み込み速度は遅いものの、安価で容量が多いという明確な強みがあります。
そのため、以下のような用途ではHDDが輝きます。
- 動画など、読み込み速度が求められない大容量なデータの保存
- 大量に保存しているデータのバックアップ
じゃあ、録画したゲーム動画の保存とかしたいときはゲーミングPCにHDDを積んだほうがいいのかな?
答えは否です。HDDが必要であれば、ゲーミングPCに積むのではなくNASを使いましょう。
私もNASを使っています。ちょっと高いですが、めちゃくちゃ便利なので強くおすすめします。
NASとは?
NASとは、「Network Attached Storage」の略称で、ローカルエリアネットワーク(LAN)、つまり自宅内の回線に接続されたストレージのことを指します。
一般的には、ファイルサーバー機能に特化したハードウェアのことをNASと呼ぶことが多いです。
NASはクラウドストレージのローカル版のようなものです。
あるいは、「共有フォルダ」が独立して様々な機能が追加されたものと言ってもいいかもしれません。
NASはHDDをセットして使用します。NASにセットしたHDDに対しては、自宅LAN内の端末であればパソコンでもスマホでも書き込み・読み込みが可能です。
NASは、言ってみれば機能をファイル置き場に絞った小さなパソコンです。
そのため、NASを運用するにはNAS本体とHDD(あるいはSSD)が必要になります。
では、なぜパソコンではなくNASを使うことをおすすめするのでしょうか?
NASのメリット
NASにはメリットがたくさんあります。
パソコンで同じことをやろうとすると、面倒だったりコストがかかることを代わりに行ってくれます。
NASのメリットの例として以下を挙げます。
- ミラーリング機能によりデータ消失のリスクに対応
- 同じLAN内ならどの端末でもNAS内のデータを扱える
- 電気代が安い
ミラーリング機能によりデータ消失のリスクに対応
HDDを2台以上搭載できるNASの場合、ミラーリング機能を使うことができます。
これは、2台のHDDに同じ内容を書き込むという機能で、HDDの故障に備えることができます。
今回紹介するSynologyのNASにはHDDの故障検知機能がついており、1台が故障したら交換することでデータの保全を図れます。
エンタープライズ向けWindows(Windows10Proなど)にはミラーリング機能がついていますが、ゲーマーでWindows10PROを使っている人は少ないでしょう。
また、WindowsにはHDDの故障検知機能がないので、HDDの故障リスクに備えるという意味では役に立ちません。
同じLAN内ならどの端末でもNAS内のデータを扱える
NASに保存されたデータは、LAN内、つまり自宅のネットワーク内であればどの端末でもアクセスできます。
例えば、NASに保存した動画をスマホやパソコン、テレビに接続したAmazonFireStickなどで再生することができます。
こちらもパソコンでも同じことが出来ます。
しかし、データにアクセスするためにはパソコンを起動しておく必要があるため、電気代が多くかかったり、パソコンの寿命が縮んだりします。
電気代が安い
NASの大きな長所として、電気代が安くランニングコストが低いことが挙げられます。
一般的なNASであればおよそ20W程度で済みます。
パソコンと比べて大きく機能を絞っているため、低消費電力が実現できます。
クラウドストレージと比較した際のNASのメリット
NASとよく比較されるのがGoogle driveなどのクラウドストレージです。
クラウドストレージは機材の保守をする必要がなく、外出先からも簡単にアクセスできる利点があります。
では、逆にNASが勝っている点はなんでしょうか。
- NASはLAN内で通信するので通信速度が速い
- ランニングコストが安い
- クラウドストレージ運営者にファイルを見られない
NASはLAN内で通信するので通信速度が速い
クラウドストレージの場合、インターネットを介して運営者のサーバーとファイルをやり取りすることになるため、どうしても速度は落ちます。
一方NASはLAN内で完結するため、ダウンロードもアップロードも速度が早いです。
ランニングコストが安い
クラウドストレージはサブスクリプション形式が主であり、月額料金がかかります。
一方NASの場合は、一度買ってしまえば電気代以外料金はかかりません。
クラウドストレージ運営者にファイルを見られない
個人的にはこれがデカいと思っているのですが、クラウドストレージにアップロードしたファイルは原則運営側はファイルの中身を確認できます。
Google Driveにアップロードしたファイルが勝手に削除されているなどの報告はよくあります。
誤削除もわりとあるようなので、ローカル環境にファイル置き場を作れることは大きな利点かなと思います。
その他細かいNASのおすすめ機能
その他にも、NASには便利な機能が備わっています。
以下にその例を挙げます。
- HDDの異常を検知してアラートを出してくれる
- スケジュール機能で学校や会社にいる間は電源オフにしておける
おすすめのNAS
これからおすすめのNASを紹介しますが、正確には紹介するのは「NASキット」になります。これは、HDDを別途購入して搭載することで「NAS」になるため「NASキット」として販売されています。
実のところ、個人用のNAS(キット)で信頼できる製品となるとほとんど2択になります。
QNAPかSynologyです。どちらも台湾のメーカーです。
どちらでも良いと思いますが、私はSynologyを買いました。ユーザー数が多くトラブった時に解決しやすそうなのと、見た目と値段が決め手でした。
個人ユースならSynologyのHDDを2枚搭載できるNAS(2ベイ)でミラーリングをすれば十分すぎるほどだと思います。
たまに速度に不満を持つレビューを見ますが、私は全く不満はありません。
1ベイのものを買ってしまうと、当然ミラーリングは出来ないのでご注意を。
QNAPはこちら。
なお、私は全くおすすめしませんが、BUFFALOもNASを出しています。BUFFALO好きな方もいるかもしれないので一応紹介しておきます。なお、こちらは「NASキット」ではなく、HDDが最初から付属している「NAS」として販売されています。
おすすめのHDD
NASに搭載するHDDのおすすめを紹介します。基準としては、NAS用でCMRのものを選びました。
容量に関しては各人で自由に選べばよいですが、2ベイでミラーリングする場合、同じ容量のものを2台購入することを強くおすすめします。そうしないと、少ない容量のHDDの分しか保存できず意味がないからです。
ちなみに私は8TBのHDDを2枚使っています。
NASを使う際の注意点
NASには運用上の注意点がいくつかありますので、以下にそれを示します。
- HDDはNAS用の物を購入した方がいい
- 外部からのインターネットアクセスは無効にした方がいい
- 初期設定は必要
HDDはNAS用の物を購入した方がいい
NASは、基本的には常時起動している状態になるので、耐久力のあるNAS用のHDDを購入した方が無難です。
外部からのインターネットアクセスは無効にした方がいい
NASはLAN内でファイルの共有が出来ますが、VPNなどを利用して外出先からもNASにアクセスできる機能が搭載されていることが多いです。
しかし、外部からのアクセスを可能にするということは、セキュリティの穴をひとつ増やすことになります。
でもハッカーに狙われるようなデータなんかないし……
攻撃者は、今後の攻撃の踏み台となるパソコンを増やすために、データなど関係なく狙えるところを狙ってきます。
最悪、自分は何もやっていないのにおまわりさんが自宅に来てしまう可能性もあります。
そのため、覚悟と知識がなければ外部アクセス機能は切って、LAN内のみで運用することをおすすめします。
初期設定は必要
NASはパソコンのようなものなので、初期設定は必要になります。
とはいえ説明書を見れば理解できる程度のことですし、私が紹介しているNASはメジャーなものなので、解決策を検索すれば見つかることが多いでしょう。
ミラーリングはバックアップではないのか?
この項は、専門家ではない私が色々と調べて考えた結論であるということは前置きしておきます。
「ミラーリング(Raid1)はバックアップではない」と色々なサイトで言われています。
実は私も買う前にそれらの記事を読んで悩みました。
結論から言うと、おそらく専門家の方の言う正しい「バックアップ」の定義と、私含む一般人の考える「バックアップ」にズレがあるのではないかと思いました。
確かに、ミラーリングは同時に2つのHDDに書き込みを行うため、ファイルを上書きしてしまったりすると元に戻すことはできません。
しかし、私含む一般人が考えている「バックアップ」の目的は、「HDDが壊れてもデータは消えてほしくない」ということなのではないでしょうか。
HDDの物理的故障に備えるという意味では、SynologyなどのNASを使ってミラーリングを行うことで対応できると思います。
Synologyなどの専用のNASにはHDDの故障検知機能がついているので、HDDが1台故障しそうになっても、健在な方からすぐにデータをコピーすれば復元することができるはずです。そうでなければ故障検知機能がついている意味がわかりません。
……ということで、「ミラーリング(Raid1)はバックアップではないが、単なるファイル置き場として使う目的であれば、故障検知機能がついたNASを使っていればHDDの物理的故障には備えられるだろう」というのが私の結論です。
もしそれでも心配であれば、SynologyのNASには、外付けHDDなどに本当の意味での「バックアップ」を行うソフトも付属していますので、それも利用すればいいでしょう。
終わりに
今回は、ゲーミングPCにHDDはいらない理由を解説して、その代替手段としてNASを紹介しました。
私はゲーミングPCからHDDはなくなるべきだとすら思っています。1つもメリットがなく、オンラインゲームの場合他のプレイヤーに悪影響を与えることもあるので。
データ置き場としてのNASは非常に便利なので、HDDが必要だと感じている方はぜひNASを購入してみてください。
結構高いので私も購入まではかなり迷ったのですが、結果的に購入してめちゃくちゃ満足しています。
世界が変わるので、おすすめです。